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寄稿・その他

寄稿「CSRD適用におけるサステナビリティ報告基準の同等性」 関西大学教授 上妻京子

1 はじめに

 日本企業のサステナビリティ報告にこれから最も影響を与えそうなのは、EUの企業サステナビリティ報告指令1(以下、CSRD)である。CSRDの適用対象は、単にEU企業だけでなく、EU域内での活動規模が大きい外国企業にまで及ぶからである。CSRD適用を受ける外国企業の範囲には日本企業も含まれ、その数は世界でも4番目に多いという2。

 サステナビリティ報告の報告基準として、今後わが国でも普及が予想されるのは、国際サステナビリティ基準審議会(以下、ISSB)がグローバル・ベースラインとして策定するIFRSサステナビリティ報告基準(以下、ISSB基準)である。ISSB基準は、逐次、わが国のサステナビリティ基準委員会(以下、SSBJ)によって国内基準化され、サステナビリティ報告基準(以下、SSBJ基準)として日本企業に適用される。しかし、CSRDが開示要求するESG情報は広範かつ詳細であるため、日本企業にとっての開示負担は、SSBJ基準よりも遙かに大きい。

2 日本企業がCSRD適用を受けるケース

 日本企業は、以下の(1)~(3)のケースで、CSRDの開示負担を負う。

(1) EU加盟国で上場する日本企業

EU上場の日本企業はCSRDの適用対象である。EU上場企業は、CSRDで改正された透明性指令により、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に準拠して作成したサステナビリティ報告を、財務諸表等と共にアニュアルレポートに含めて、決算日後4ヶ月以内に上場するEU加盟国で登記する必要がある。

(2) 日本企業のEU子会社

 日本企業のEU子会社が、1) 大規模企業(上場・非上場を問わない)または中小規模上場企業に該当するか、または、2) 自らが大規模グループを支配する親企業(中間親企業)である場合は、いずれもCSRD適用となり、前者は単体サステナビリティ報告、後者は自社グループの連結サステナビリティ報告を、ESRS3に準拠して作成し、それを登記する。

 ただし、CSRD適用のEU子会社は、・・・・・・

    

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