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寄稿:「知られざる日本の製造業におけるプラットフォーム戦略」神戸学院大学 経済学部 准教授 林 隆一

◆プラットフォームの鍵は多様性拡大
米国GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)や中国BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)などが世界の時価総額上位を占めることで、プラットフォームビジネスが注目を集めている。プラットフォームとは、商品やサービス・情報を集めた「場」を提供することで利用客を増やし、ネットワーク外部性を利用し、市場での優位性を確立するビジネスモデルである。プラットフォーム戦略とは、関係する企業やグループを「場」に乗せることで新しい事業の「エコシステム」(生態系)を構築する経営戦略である。ここ数年、日本でも取上げられることが多くなったものの、IT関連で顧客を囲い込むといった側面が注目され、世の中の多様性を拡大し付加価値をどう増やすのかという本質的な視点が見過ごされているケースも多い。実は日本が得意とする製造業において、理論化される前からプラットフォーム戦略を既に実践し、企業価値を増大させてきた企業が存在する。工作機械のキーデバイス大手のファナックはプラットフォーム戦略を実践しているが、十分に周知されていない。本稿では、プラットフォーム戦略の視点からファナックの事例を通し、「顧客囲い込み」や「選択と集中」だけでなく、企業価値向上には多様性創出による付加価値拡大に加え、IRの重要性を強調したい。