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寄稿

(コラム)AI時代の統合報告書の存在意義 / 神戸学院大学 経済学部 教授 林 隆一

 毎年見ていた企業の統合報告書が劇的に読みにくくなった。その企業の統合報告書は、過去に「日経統合報告書アワード」を受賞したこともあり、もともと内容が充実し読み応えもあったが、今年度からAIの「機械可読性」を重視したあまり、整った形式だが内容が頭に入ってこなくなった。最近では、AIで検索すると『統合報告書は「人間が読むもの」から「AI・機械が解析するもの」へと劇的な転換点を迎えている』と出てくる。織辺(2025)によると、2024年時点でさえ、日経225構成銘柄で機械によるデータ識別に有効なメタデータをなんらかの形で登録している比率は40%となっている。IR分野でもAI活用セミナーやAIツールが活況となっているが、AIと統合報告書の在り方には似たような課題があるのではないかと思い、それぞれ考察してみた。

 

AIで学生とのコミュニケーションが困難に】

 この冬、全国の多くの大学教員は、卒業論文(指導)が様変わりしていることを実感している。初期の卒論原稿でも「誤字脱字」や「乱れた文体」は激減し、それらしいキーワードとどこかで見た論理構成が並ぶ美しい論文が目立つようになった。ほとんどの大学がAIの使い方にガイドラインを設けており、それ自体に問題はなく、学生自身でAIとの対話を通して思考を深めるケースもみられる。一方で、卒論の抽象的な概念を、学生自体が具体的に理解できていない場合は、卒論を改善するための指導やコミュニケーションがより困難となっている。

 試しにAIにタイトルだけ与え、卒業論文の要約(1000字)を書かせると、適切なキーワードを多用し、無理のない論理構成でまとめてくるが、具体性やインプリケーションのない内容だった。しかし、AIに反証のデータの存在を示すと、それらを自ら調べ、忖度して正反対の結論をまとめてきた。さらに、質問を繰り返すことで、意見は具体的かつ現実的なものに修正されていった。次に、ファイナンスの授業の計算問題をAIに解かすと、最初は明らかに間違った回答がなされたが、そのままAIは計算を積み上げ、当初と反対の正解を導いた。AIは最初の直感の回答が違っていた言い訳もしっかりとしてきて、一定のコミュニケーションをとることができた。

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