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寄稿・その他

寄稿「行き過ぎた株主至上主義からマルチステークホルダー重視の経営への転換と企業に期待される情報発信」 公益社団法人関西経済連合会 関 総一郎

はじめに

 米国では1970年代以降、新自由主義的な考えが強まり、日本においては、この米国の流れを汲んだコーポレートガバナンスに関するルールや開示制度が導入されてきた。

 関西経済連合会では、資本コストを意識した経営などは重要であると考えるものの、こうした諸制度によって、企業がややもすると過度な株主重視や短視眼的な経営に陥らないかという懸念を抱き、マルチステークホルダー経営の重要性とこれに基づく諸制度の改正に向けた意見発信や企業への働きかけを行ってきた。

 以下では、当会の考え方や取り組みの方向性、企業に期待される情報発信について紹介したい。

1. 国内外おけるマルチステークホルダー重視の流れ

 米国では、富の格差拡大や社会的価値観の分断などへの懸念が広がるなかで、2019年8月の米国ビジネス・ラウンドテーブル(BRT)が、顧客、従業員、取引先、地域社会、株主といったマルチステークホルダーを重視するとの方針を「Statement on the Purpose of a Corporation」において表明した。これはそれまでの株主第一主義を修正するものとして、大きな注目を集めた。また、2020年1月の世界経済フォーラムのダボス会議においても「ステークホルダー資本主義」が主題となるなど、企業は多様なステークホルダーを意識した経営にシフトすべきであるとの議論が・・・・

    

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