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寄稿・その他

寄稿「EUの経済戦略が世界を巻き込みつつある:サーキュラーエコノミーの国際的な動向」 法政大学 経営学部 北田皓嗣

はじめに

 世界最大の運用会社であるBlackRockのCEOであるラリー・フィンクは,「サーキュラーエコノミーは未来の設計図(blueprint)である」と語っています。この設計図がどのように描かれ,これからの国際社会がどのように変容していくのかを理解するには,サーキュラーエコノミーを強力に推進するEUの方策とその背景を理解する必要があります。サーキュラーエコノミーが,資源の枯渇や廃棄物,汚染の問題などサステナビリティに貢献する取り組みであることは間違いありません。しかし,EUは資源の有効活用を通じて経済の再構築を図り、世界の新たなスタンダードを作り出そうともしています。サーキュラーエコノミーは、環境に優しいだけでなく、世界経済の枠組みを変えるための戦略的手段ともなり得ます。

EUのサーキュラーエコノミーの背景

 資源を循環させていくという考え方は,EUの産業を取り巻く状況と相性が良いです。一つめは,モノの消費からモノの利用に付加価値の軸をシフトしていく点にあります。EUは長らくモノづくりの競争力が低く,多くの製品をアジア地域などグローバルな市場から購入してきました。モノを作って売っていくモデルから,モノを利用するためのサービスを提供するモデルへと市場がシフトしていくサーキュラーエコノミーは・・・・・

    

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