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寄稿

寄稿「会計学の諸相と統合報告への期待」 立教大学経営学部客員教授 倍 和博

 新しい資本主義が標榜される中、市場環境を巡る会計学の資本問題から目が離せない。とりわけ、有価証券の公正価値(時価)評価に関わる議論は会計学の体系を再考するうえで興味深い論点といえる。他方で、ESGやSDGsなどの取り組みから創出される無形財に注目が集まるが、それらの無形財を価値循環プロセスにどう組み込み、いかに表現するかがディスクロージャーの今後の展開を占う。小稿が担うべき課題は、現代の市場環境を踏まえて会計学の役割を振り返り、会計学が直面する諸問題とコミュニケーション手段としての統合報告との関係性を整理する点にある。

会計学をとり巻く市場環境の変化

 これまでのモノづくりを中心とした市場の関心事は、投下資本を長期的に運用して利益を最大化する点にあった。しかし、次第に市場のグローバル化が進行し組織間競争が激化の様相を呈すると、組織の価格戦略やコスト構造に異変が生じてしまう。一連の状況変化は多くの投資家を複数組織に対する短期分散投資に踏み切らせ、その関心は投下資本の回収計算にシフトしていく。こうした投資額の短期的な清算・回収を重視する市場への移行が進むと、資本を維持しつつ利益の最大化計算に重点を置く旧来の会計思考に変化の兆候が現れ、会計処理の見直しが促される。

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