
要旨
- 本コラムの目的は、今年2月12日に米国SECが発表した「スタッフ・リーガル・ブリーフィング第14M」によって米国の株主総会におけるESG関連株主提案トレンドに大きな変化が起こる可能性について言及したメディア報道の検証を通して政治と資本市場の動向にどのような影響があるのかについて考察するものである。
- ノーアクションレターとは、SECが企業からの依頼(ノーアクションリクエスト)に伴って、株主提案として総会に提起する問題か否かの判断の後、企業側に総会付託の必要性無しとの免罪符を与えるものであり、「規則14a-8条」によって規定されている。
- バイデン政権下の2021年11月3日付で公開された「スタッフ・リーガル・ブリーフィング第14L」では広範な社会的影響があると判断した株主提案は除外を認めず、SECは極力口出ししない方針を発表した。
- その結果、2023年のノーアクションリクエストは減少しESGやDEI関連の株主提案が増えた経緯はあるが、翌2024年にはリクエスト全体は再度増加傾向となっている
- 「スタッフ・リーガル・ブリーフィング第14L」の廃止通達となった「スタッフ・リーガル・ブリーフィング第14M」発効によって2025年のノーアクションリクエストの数はさらに増加している。
- ノーアクションリクエストに対してそれを承認しノーアクションレターを出した比率もこの4年間では増加している。
- しかし、その承認比率(つまりノーアクションレターを出した率)は2023年より既に増加基調であることがわかる。
- 当研究所で継続調査を行っている36銘柄で見てみると、過去7年間におけるESG関連株主提案に対する株主総会における賛成票は2021年をピークに大きく下げている。
- 特に、2022年を最後に過半数の得票を獲得した案件はなくなり、2025年においては賛成票の単純平均は10.93%、中央値も10.64%となり、2022年をピークに1/3以上獲得していた賛成票が激減している。
- SECがノーアクションレターを出している事由として最も多いのは「規則14a-8(i)(7)」で規定している「通常業務」であるが、この理由付けは過去4年間(2022年から2025年)で27%→36%→40%→39%と推移し、直近3年間は4割前後の推移で、ほとんど変化していない。
- つまり、トランプ政権下におけるSECの運用において大きな変化は見られない。
- 今回のSECにおけるノーアクションレター発布のトレンド調査において留意すべき点は毎年SECに提起されるノーアクションリクエストの2割程度が企業と株主とのエンゲージメントを通じて取下げられている点である。
- 企業と株主とのエンゲージメントはノーアクションリクエストで表面化している件数以上あると思われる。会社法の建付けが違うことには留意する必要はあるが、日本においても株主総会において企業と株主が敵対するのではなく、このエンゲージメントの重要性を再認識すべきではないか?
- 政治とは関係なく世の中のトレンドはESGから競争力あるサステナビリティの時代への移行を感じさせる。
ここではページの都合で要旨だけに留めている。詳細は添付PDFを参照していただきたい。
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