宝印刷D&IR研究所

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調査研究報告Research

研究員コラム

小谷主席研究員

研究員コラム「持続的成長って何だ? 解決編」 - sustainとmaintain - を発行しました。

 2023年も後二ヶ月を切った。年初に「持続的成長って何だ?」と題したコラムをアップしてスタートを切ったが、この一年、ずっと「持続的成長って何だ?」を引きずりながら様々な国内外企業のアニュアルレポートや統合報告書を読んできた。年初のコラムで紹介したように海外のアニュアルレポートや統合報告書には「Sustainable Growth」という言葉はほとんど使用されない。そして、ここ最近、Sustainableを「持続的な」Sustainabilityを「持続可能性」とした「持続」という日本語訳にどうも無理があるのではないかと感じるようになった。年初に考えた「持続的成長って何だ?」を年内最終回の研究員コラムで再度取り上げ、日本語の「持続」についての違和感の本質を考察してみたい。筆者は言語学者ではないのでその精度は定かではないが、できれば意味論(言語学)の専門家に検証してもらいたいと思っている。

拡大と持続

 Sustainableを「持続的な」Sustainabilityを「持続可能性」とする日本語訳に疑問をもつ中で先月、ひょんなことから山下惣一氏という農民作家を知り、彼の考え方を学ぶ機会に恵まれた。農業関係の方々にはとても著名な方のようでその考え方も周知されているようだが、筆者にとってはとても新鮮な考え方だった。彼が「農業の基本的性格」と呼び語っている内容は「成長より安定、拡大より持続、競争より共生であり、経済成長によって農業が疲弊してきたのが近代の歴史だと感じる。そして、自然相手の農業は成長してはいけない」である。彼はまた「去年のような今年があり、今年のように来年があるのが一番良い」とも述べている。しかし、この状況を我々は一般的に・・・

    

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