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調査研究報告Research

研究員コラム

小谷主席研究員

研究員コラム「持続的成長って何だ?」を発行しました。

日本企業の統合報告書でよく見る「持続的成長」或いは「持続的な成長」

 3月決算の多い日本では6月末に有価証券報告書がファイリングされ、大体その3か月後の9月末前後に統合報告書を開示する企業が多い。私が所属するESG/統合報告研究室はその名前からもわかる通り、統合報告書の調査及び作成支援を行っている。そのため、統合報告書発行直後の10月から12月にかけて次年度統合報告書作成のため、発行した統合報告書の改善点等のレビュー依頼も多くある。私も例年、数十の統合報告書のレビューを行っている。単にレビューといっても、対象企業の統合報告書を読んで終わりというわけにはいかない。レビュー対象企業やそれら企業の国内外の競合他社を含めてかなりの数の統合報告書を読むことになる。当研究所で実績を発表しているように統合報告書作成企業も2022年は800社を大幅に超える勢いなので、年々レビュー依頼が増え、読む統合報告書も増加の一途だ。

 昨年も、比較対象のために海外のアニュアルレポートを読んでいてふと気づいたことの一つがある。それは、「持続的成長」或いは「持続的な成長」という言葉を日本企業の統合報告書ではよく見かけるが、海外の企業で持続的成長、つまり「Sustainable Growth」という術語をほとんど見ないことだ。

具体的に海外企業における「Sustainable Growth」を調べてみた

 毎年、年明けにカナダの雑誌がダボス会議で発表する「世界でもっともサステナブルな企業トップ100社」というのがある。今年も、例年通りもう少しで発表されるであろうが、今回のコラムのため、昨年1月19日に発表された100社で調べてみた。この100社の国・地域別企業数は「添付資料A(P4)」の通り、欧州が14ヶ国42社、アメリカ大陸が3ヶ国39社、アジア・パシフィックは日本を含めた8ヶ国19社となっている。多分、ここに選出されている企業は「グローバルで持続的成長に気を遣っている企業ではなかろうか」ということで、これら100社の中で、「Integrated Report」、「Strategic Report」、「Annual Report」などそれぞれ名称は異なるが、ウェブサイトで、財務情報及び非財務情報を掲載し、且つ、英語で資料入手が可能な企業95社をベースに調べてみた。

 次ページ「資料1」をご覧いただきたい。「Sustainable」という単語は合計5,035回登場し、1社平均53回、中央値は30回となっている。一方、「Sustainable Growth」という術語は平均で1.84回、中央値ではゼロとなっている。そして、「Growth」は平均84.37回、中央値66回とある。やはり、私が感じたように「Sustainable Growth」は限りなくゼロに近い利用率である。

    

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