
気候変動に関連する政治の動き
日本企業の経営者や開示担当者は昨今の非財務情報開示に関する動きに対してとても関心が大きいと思われる。10月6日の新聞報道では「金融庁は上場企業など約4,000社を対象に、気候変動に伴う業績などへの影響を開示するよう義務付けることを検討する。」との報道もあり、コーポレート・ガバナンス報告書におけるTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の利用など今後制度開示の中においても非財務情報開示のニーズは高まりこそすれ、弱まることはないであろう。非財務情報は気候変動のみならず、その他の環境課題、社会課題、ガバナンス、そして知財を含めた無形資産と言った多くの要素が関わっている。しかし、現在喫緊の課題として大きくクローズアップされている対象は気候変動であろう。この気候変動に関連して最も進んだ取り組みを推し進めようとする欧州は「EUタクソノミ」として環境問題に貢献する持続的な経済活動、economic activityの基準を設定しており、これに基づいて企業の情報開示のスタンダードを作成し義務化する予定である。ここで重要なポイントはEUタクソノミという分類法において持続可能ではないと判断されたeconomic activityを行う企業には資金が提供されずに淘汰される社会を創ろうという政治的な動きである。これは一時、日本の新型コロナウイルス感染症対策でアルコール提供を行う企業に銀行融資をストップさせ酒類が飲食店にまわらないようにしようという意図の発言をした某大臣と同じ発想である。この具体的事例として、欧州の大手金融機関であるINGが9月16日に発表した「2021年版気候レポート」で示されている。このレポートによると「火力発電の石炭採掘へのエクスポージャー(融資・投資額)は、2017年の3億1,600万ユーロから2020年末には3,000万ユーロへと90%以上減少した。」となっており、欧州では既に資金の流れから気候変動への対応を行っている。EUタクソノミはEU域内の話ではあるが、欧州においてオペレーションを行う日本企業にとっては今後検討せざるを得ない問題であろう。また、6月には英国も英国グリーンタクソノミ創設の検討を開始したという動きもある。
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