宝印刷D&IR研究所

宝印刷株式会社

調査研究報告Research

研究員コラム

小谷主席研究員

研究員コラム「国境なき資金移動によるサステナビリティ - 米政権がどのような形であれ動きは止められない - 」を発行しました。

財務資本と鶏卵

 「吉川貴盛元農林水産大臣が、大臣在任中に大手鶏卵生産会社の元代表から現金500万円の賄賂を受け取ったとして、東京地検特捜部に収賄の罪で在宅起訴された」と年初の1月15日に報道された。これにはパリで発足した世界の動物衛生の向上を目的とした政府間機関、「国際獣疫事務局:フランス語でOffice International des Epizooties(略称OIE)」が策定中の「採卵鶏のアニマルウェルフェア規約」の動きと大きな関わりがある。世界的にはアニマルウェルフェアの実現が動物の健康だけでなく、人の健康や環境保護といった持続可能性に直結しているとの認識が強い。ケージでの飼育をやめる、つまりケージフリーへの動きがグローバルで強まる中、現状維持したい日本の養鶏業界の賄賂によって規約策定が日本寄りになったときの日本に対する評価はどうだろうか?

 畜産動物の愛護に関する食品関連企業のコミットメントを促進し、諸課題への取り組みを評価するベンチマークを発表している団体Business Benchmark on Farm Animal Welfare(BBFAW)は、2020年7月「農場動物福祉に関するグローバル投資家声明」に運用資産2.5兆ポンド(約350兆円)を代表する33の投資家が署名したと発表した。「投資家として、私たちは、投資先企業が農場動物福祉に関連するリスクと機会を十分に考慮し、課題に対処するための効果的な方針とプロセスを持っているという保証を求めています。農場動物福祉に関する企業の実践と実績を分析することで、それらの企業の経営の質とリスク管理プロセスの質についての貴重な洞察を得ることができます。」として今後アニマルウェルフェアに遅れている企業に対しては気候変動等と同様に投資を控えることもありそうだ。この流れは既に海外では意識され鶏卵を利用する大手企業では実行に移している。スターバックスでは2018年、既に2020年ケージフリー100%を宣言し、大手流通の米国のウォルマートや、米国・カナダのセブンイレブンでは2025年を目標にケージフリーの宣言をしている。投資家の大きな動きが鶏卵利用企業の行動を変容させているのは間違いない。

米国のパリ協定復帰と米国企業

    

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