宝印刷D&IR研究所

宝印刷株式会社

調査研究報告Research

研究員コラム

片桐研究室長

研究員コラム「国際サステナビリティ情報開示基準と日本におけるサステナビリティ情報開示の今後を整理する」を発行しました。

 IFRS財団が国際的なサステナビリティ基準委員会の設立に向けた活動を開始したのは、2019年10月だ。それから4年弱を経て、2023年6月26日にIFRS財団傘下の機関であるISSB(International Sustainability Standards Board:国際サステナビリティ基準審議会)から、世界共通の最初の基準となる「IFRS S1」と「IFRS S2」が公表された。

 IFRS S1は、「企業が短期、中期、長期にわたって直面するサステナビリティ関連のリスクと機会について投資家とのコミュニケーションを可能とするべく設計された一連の開示要求事項を提供するもの」とされており、いわゆるサステナビリティ情報開示の全体的指針が記されたものになる。IFRS S2は「気候関連の具体的な開示を定め、IFRS S1 との併用を前提」とされており、サステナビリティ情報開示の中でも気候変動に特化した指針を記したものであり、TCFDの提言を完全に取り入れたものになっている。特にIFRS S2では、Scope1,2に加えてScope3も含めて報告期間中に発生した排出量を開示することが盛り込まれた点はポイントになろう。ただし、Scope3についてはその是非について様々な意見がある状況であることも、少し頭の片隅に置いておきたい。

 こうした潮流を過去からずっと追ってきたサステナビリティ担当者にとっては、「やっと世界共通の基準が出来た!」と喜ばしく思っておられると思うが、有価証券報告書のサステナビリティ情報開示に四苦八苦しつつ、なんとか対応した情報開示担当者にとっては、「もうこれ以上は勘弁して!」と思っておられる方も相当数いらっしゃるのではないだろうか。これからどうなるのか、不安に思っている方も多いだろう。そんな方々が少しだけホッとできるよう、まずは現時点で分かっていることを整理し、理解できるよう以下に纏めてみようと思う。

    

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