宝印刷D&IR研究所

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調査研究報告Research

研究員コラム

片桐研究室長

研究員コラム「- 有価証券報告書と統合報告書で考える - サステナビリティ情報開示の波に流されず、 波を操るための「考え方」のコツ」を発行しました

肩を落とす情報開示担当者の方に向けて

 いよいよ、2023年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書で、サステナビリティ情報の記載が義務化される。「サステナビリティに関する考え方及び取組」と「従業員の状況」において記載が必須となるが、有価証券報告書提出会社が参考にできるよう、金融庁では2023年3月24日に「記述情報の開示の好事例集2022」の更新版を公表している。しかし、選りすぐりの好事例なだけあって「このレベルの開示はどうやればできるのか?」「当社では無理、きっと大会社はリソースも豊富だから出来るんだろう」など、自社の開示状況と好事例集を突合させ、がっくりと肩を落とす開示担当者も少なからずいるであろう。

 そもそも、好事例集に掲載されるような企業は、ある日突然、サステナビリティに対応できるようなったわけではない。好事例集にも掲載企業の主な取り組みが一部紹介されている通り、過去から様々な課題にぶつかりながら地道にコツコツと課題をクリアしてきた成果でもあり、そうではない企業が一足飛びにそのレベルの開示に到達することは至難の業だ。だからと言ってダメだとあきらめるのではなく、好事例集にあるような開示ができるように今からでも動き出しましょうね、ということである。脅かすつもりはないが、今後ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準を踏まえ、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)で我が国におけるサステナビリティ開示の個別項目を検討していく流れがある以上、今以上にサステナビリティに関する情報開示要請が強くなるのは目に見えている。もちろん米国においてアンチESGのうねりが強くなっていることも認識しているが、アンチESGを提唱している団体やアセットオーナーにしてもサステナビリティの根本に対して反対を述べているわけではないので、ESG情報開示の必要性が全くなくなり元の鞘に戻るということは考えにくい。

 そこで、昨今の様々な情報開示要請で心身ともにお疲れの情報開示担当者に思いを馳せながら、以下、法定開示書類である有価証券報告書と、任意開示書類である統合報告書の2つの媒体ごとに、どのような考え方をすれば一歩前に進めるのかご参考いただけるよう、コツを少し記載したいと思う。

有価証券報告書<点ではなく面で考える>

 有価証券報告書において、求められている項目を整理すると次頁になる。

    

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